ヘンリーヘンリーズのギター担当。


by hayashihiromu

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斜陽から

『他の生き物には絶対に無くて、人間だけにあるもの。それはね、ひめごと、というものよ。いかが?』




『僕が早熱を装ってみせたら、人々は僕を、早熱だと噂した。僕が、なまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。〜中略〜けれども、僕が本当に苦しくて、思わず呻いた時、人々は僕を、苦しい振りを装っていると噂した』



『結局、自殺するよりほか仕様がないのじゃないか。
 このように苦しんでも、ただ、自殺で終るだけなのだ、と思ったら、声を放って泣いてしまった』



『待つ。ああ、人間の生活には、喜んだり怒ったり悲しんだり憎んだり、いろいろの感情があるけれども、けれどもそれは人間の生活のほんの一パーセントを占めているだけの感情で、あとの九十九パーセントは、ただ待って暮らしているのではないでしょうか。幸福の足音が、廊下に聞こえるのを今か今かと胸のつぶれる思いで待って、からっぽ。ああ、人間の生活って、あんまりみじめ、生まれて来ないほうがよかったとみんなが考えているこの現実。そうして毎日、朝から晩まで、はかなく何かを待っている。みじめすぎます。生まれて来てよかったと、ああ、いのちを、人間を、世の中を、よろこんでみとうございます。』





『破壊思想。破壊は、哀れで悲しくて、そうして美しいものだ。破壊して、建て直して、完成しようという夢。そうして、いったん破壊すれば、永遠に完成の日が来ないかもしれぬのに、それでも、したう恋ゆえに、破壊しなければならぬのだ。革命を起こさなければならぬのだ。』



『革命を、あこがれた事も無かったし、恋さえ、知らなかった。いままで世間のおとなたちは、この革命と恋の二つを、最も愚かしく、いまわしいものとして私たちに教え、戦争の前も、戦争中も、私たちはそのとおりに思い込んでいたのだが、敗戦後、私たちは世間のおとなを信頼しなくなって、何でもあのひとたちの言う事の反対のほうに本当の生きる道があるような気がして来て、革命も恋も、実はこの世で最もよくて、おいしい事で、あまりいい事だから、おとなのひとたちは意地わるく私たちに青い葡萄ぶどうだと嘘うそついて教えていたのに違いないと思うようになったのだ。』



『私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ。』








『幸福感というものは、悲哀の河野底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではなかろうか。悲しみの限りを通り過ぎて、不思議な薄明かりの気持ち、あれが幸福感というものならば、陛下も、お母様も、それから私も、たしかにいま、幸福なのである。』



『ああ、何かこの人達は、間違っている。しかし、この人たちも、私の恋の場合と同じ様に、こうでもしなければ、生きて行かれないのかも知れない。人はこの世の中に生まれて来た以上は、どうしても生き切らなければいけないものならば、この人たちのこの生き切るための姿も、憎むべきではないかも知れぬ。生きている事。生きている事。ああ、それは何というやりきれない息もたえだえの大偉業であろうか。』


『「今でも、僕をすきなのかい」
 乱暴な口調であった。
「僕の赤ちゃんが欲しいのかい」
 私は答えなかった。
 岩が落ちて来るような勢いでそのひとの顔が近づき、遮二無二しゃにむに私はキスされた。性慾のにおいのするキスだった。私はそれを受けながら、涙を流した。屈辱の、くやし涙に似ているにがい涙であった。涙はいくらでも眼からあふれ出て、流れた。
 また、二人ならんで歩きながら、
「しくじった。惚ほれちゃった」
 とそのひとは言って、笑った。
 けれども、私は笑う事が出来なかった。眉まゆをひそめて、口をすぼめた。
 仕方が無い。
 言葉で言いあらわすなら、そんな感じのものだった。』



『「死ぬ気で飲んでいるんだ。生きているのが、悲しくて仕様が無いんだよ。わびしさだの、淋しさだの、そんなゆとりのあるものでなくて、悲しいんだ。陰気くさい、嘆きの溜息ためいきが四方の壁から聞えている時、自分たちだけの幸福なんてある筈はずは無いじゃないか。自分の幸福も光栄も、生きているうちには決して無いとわかった時、ひとは、どんな気持になるものかね。努力。そんなものは、ただ、飢餓の野獣の餌食えじきになるだけだ。みじめな人が多すぎるよ。キザかね」
「いいえ」
「恋だけだね。おめえの手紙のお説のとおりだよ」
「そう」
 
 私のその恋は、消えていた。』




『姉さん。
 だめだ。さきに行くよ。
 僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。
 生きていたい人だけは、生きるがよい。
 人間には生きる権利があると同様に、死ぬる権利もある筈です。
 僕のこんな考え方は、少しも新しいものでも何でも無く、こんな当り前の、それこそプリミチヴな事を、ひとはへんにこわがって、あからさまに口に出して言わないだけなんです。
 生きて行きたいひとは、どんな事をしても、必ず強く生き抜くべきであり、それは見事で、人間の栄冠とでもいうものも、きっとその辺にあるのでしょうが、しかし、死ぬことだって、罪では無いと思うんです。
 僕は、僕という草は、この世の空気と陽ひの中に、生きにくいんです。生きて行くのに、どこか一つ欠けているんです。足りないんです。いままで、生きて来たのも、これでも、精一ぱいだったのです。』

『姉さん。
 僕に、一つ、秘密があるんです。』

『姉さん。
 死ぬ前に、たった一度だけ書かせて下さい。
 ‥‥スガちゃん
 その奥さんの名前です。』

『姉さん。
 僕には、希望の地盤が無いんです。さようなら。
 結局、僕の死は、自然死です。人は、思想だけでは、死ねるものではないんですから。

 一つ、とてもてれくさいお願いがあります。ママのかたみの朝の着物。あれを姉さんが、直治が来年の夏に着るようにと縫い直して下さったでしょう。あの着物を、僕の棺にいれて下さい。僕、着たかったんです。

 僕は、素面で死ぬんです。
 もういちど、さようなら。
 姉さん。
 僕は、貴族です。』





『この世の中に、戦争だの平和だの貿易だの組合だの政治だのがあるのは、なんのためだか、このごろ私にもわかって来ました。あなたは、ご存じないでしょう。だから、いつまでも不幸なのですわ。それはね、教えてあげますわ、女がよい子を生むためです。』





『私は、幸福なんですの。私の望みどおりに、赤ちゃんが出来たようでございますの。私は、いま、いっさいを失ったような気がしていますけど、でも、おなかの小さい生命が、わたしの孤独の微笑のたねになっています。』

『こいしいひとの子を生み、育てる事が、私の道徳革命の完成なのでございます。』

『私生児と、その母。
 けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。
 どうか、あなたも、あなたの闘いをたたかい続けて下さいまし。
 革命は、まだ、ちっとも、何も、行われていないんです。もっと、もっと、いくつもの惜しい貴い犠牲が必要のようでございます。
 いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。』

『一つだけ、おゆるしをお願いしたい事があるのです。
 それは、私の生まれた子を、たったいちどでよろしゅうございますから、あなたの奥さまに抱かせていただきたいのです。そうして、その時、私にこういわせていただきます。
 「これは、直治が、或る女のひとに内緒に生ませた子ですの」』





久しぶりに斜陽を読んだ。
そして見つけた、何年か前に読んだ時に線を引いていた箇所。もうちょいあったけれど。パッチワーク。
俗。皮肉。周知。羞恥。ちくしょう。あーあ。
嘘と秘密の違いってなんだろう。
期待は、人間の負の感情の吹き溜まり。感情の墓場。
不良と優しさ。
犠牲者と美。
日本と憐
恋と革命。


僕は、保守派の人間です。










おわり
by hayashihiromu | 2013-06-18 00:45 | 普通

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